ベンチプレスは、大胸筋を中心に三角筋前部や上腕三頭筋も鍛えられる、代表的な上半身の筋力トレーニングです。
高重量を扱いやすく、筋力アップから筋肥大まで幅広い目的に活用できる一方、フォームが崩れると狙った筋肉に十分な刺激を与えられなかったり、肩や手首などに負担がかかったりすることがあります。
特に重要なのが、ベンチ台に寝る位置・グリップ幅・肩甲骨の固定・バーを下ろす位置・足の使い方です。
この記事では、ベンチプレスの正しいフォームと基本的なやり方をはじめ、鍛えられる筋肉、重量・回数・セット数の考え方、胸に効かせるコツ、よくある間違い、安全に行うためのポイントまで詳しく解説します。

この記事を書いた人:今野栄也人(こんのはやと)
編集長
宮城県仙台市内でパーソナルジム「TRI FITNESS」を運営。年間4000件を超える指導件数を誇る。警察学校や専門学校での講師としても活動している経験豊富なトレーナー。
ベンチプレスとは?

ベンチプレスは、ベンチ台に仰向けになった状態でバーベルを胸の上から押し上げる、上半身の代表的な多関節エクササイズです。
主に肩関節の動きと肘関節の伸展を使ってバーベルを押し上げるため、大胸筋だけでなく三角筋前部や上腕三頭筋も動員されます。
筋力トレーニングの代表的な種目として知られており、スクワットやデッドリフトとともに「BIG3」のひとつとしても有名です。
ベンチプレスは、単純に重い重量を持ち上げることだけが目的ではありません。
筋肉を大きくしたい場合は筋肉に十分な刺激を与えること、筋力を高めたい場合はフォームを安定させながら高い出力を発揮することなど、目的に応じて重量や回数、フォームを調整することが重要となります。
ベンチプレスで鍛えられる筋肉

ベンチプレスでは、主に以下の筋肉を鍛えられます。
- 大胸筋
- 三角筋前部
- 上腕三頭筋
大胸筋
大胸筋は胸の大部分を覆っている大きな筋肉で、腕を前方へ押し出したり、腕を体の内側へ近づけたりする動作などに関わります。
ベンチプレスでは、バーベルを胸から押し上げる際に大きな力を発揮するため、胸板を厚くしたい人や大胸筋を発達させたい人にとって重要な種目です。
大胸筋は大きく「鎖骨部」「胸肋部」「腹部」に分けて考えられます。ベンチプレスでは主に大胸筋の中部を鍛えられるため、大胸筋の上部を重点的に鍛えたい場合には、インクラインベンチプレスなどのベンチプレスのバリエーション種目を組み合わせるのも有効です。
三角筋前部
三角筋は肩関節を覆うようについている筋肉で、前部・中部・後部に分けられます。
ベンチプレスでは、特に三角筋前部が動作に関与します。
三角筋前部は腕を前方へ上げたり、腕を前方へ押し出したりする動作に関わるため、ベンチプレスにおける補助的な役割を担います。
上腕三頭筋
上腕三頭筋は、いわゆる「二の腕」の後ろ側にある筋肉です。
肘を伸ばす動作に関わるため、ベンチプレスでバーベルを押し上げる際にも大きく働きます。
ベンチプレスの重量を伸ばしたい場合には、大胸筋と併せて上腕三頭筋の筋力も重要になります。
ベンチプレスのやり方
バーベルベンチプレス(以下、ベンチプレス)は主に大胸筋・三角筋前部・上腕三頭筋といった上半身で押す動作に関わる筋肉を鍛えることができる多関節エクササイズ。以下でベンチプレスの基本的なフォームを紹介します。
- ベンチ台に仰向けになる
- バーベルを握る
- 肩甲骨を寄せて安定させる
- バーベルをラックから外す
- バーベルを胸へ向かって下ろす
- 胸からバーベルを押し上げる
- 同じ動作を繰り返す
1. ベンチ台に仰向けになる
ベンチ台の上に仰向けになり、目線がバーベルの真下付近になる位置を目安にセットします。
頭、両肩、臀部をベンチ台につけ、両足は床につけて踏ん張り体を安定させます。
ベンチプレスでは、単に仰向けになるだけではなく、動作中に体が動かないようにセットすることが重要です。
2. バーベルを握る
バーベルを両手で握ります。
手幅は「肩幅の○倍」と一律に決めるのではなく、バーベルを胸まで下ろしたときに前腕が大きく傾かず、肘や肩に無理のない位置を探すことが基本です。
一般的には肩幅より広めのグリップが使われますが、骨格や腕の長さ、トレーニング目的によって適した手幅は異なります。基本は極端に広い・狭いグリップを避け、フォームを安定させやすい位置から始めましょう。

3. 肩甲骨を寄せて安定させる
バーベルをラックから外す前に、肩甲骨を下方へ降ろし軽く内側へ寄せ安定させます。
肩甲骨が動作中に大きく前後へ動いてしまうと、上半身の土台が不安定になり肩を痛める原因になることもあるので胸を軽く張り、肩をすくめないように意識しましょう。
4. バーベルをラックから外す
肩甲骨と下半身の位置を維持したまま、バーベルをラックから外します。
このとき、バーベルは肩の上あたりまで移動させて安定させます。
ラックから外した後に肩が前へ引っ張られないよう、肩甲骨の位置を保ちましょう。
5. バーベルを胸へ向かって下ろす
息を吸いながら、バーベルをゆっくり胸へ向かって下ろします。
下ろす位置は、一般的には乳頭付近が目安です。
ただし、胸の形や腕の長さ、グリップ幅などによって適切な軌道は変わります。
重要なのは、肩や手首に無理のない軌道で、バーベルをコントロールしながら下ろすことです。
6. 胸からバーベルを押し上げる
バーベルが胸に近づいたら、床を足で押すように力を使いながら、バーベルを上方向へ押し上げます。
このとき、肩がすくんだり、お尻がベンチ台から浮いたりしないように注意しましょう。
肘を伸ばしてスタートポジションへ戻ったら、次の反復に移ります。
7. 同じ動作を繰り返す
フォームを崩さずに設定した回数を繰り返します。
重量が重くなるほどフォームが崩れやすくなるため、回数をこなすことよりも、狙ったフォームを維持できる重量を選ぶことが重要です。
ベンチプレスで重要なフォームのポイント

ベンチプレスは、腕の力だけでバーベルを押し上げる種目ではありません。
上半身を安定させ、下半身から生まれる力も利用しながら、全身をひとつの土台として使うことが重要です。
ここではベンチプレスで安全かつ効果を高めておこなうためのポイントについて解説します。
- 肩甲骨を安定させる
- 適度なアーチをつくる
- 足を床につける
- 手首を立てる
肩甲骨を安定させる
ベンチプレスでは、肩甲骨を寄せて安定させた状態を維持することが重要です。
肩甲骨が動いてしまうと、バーベルを支える上半身の土台が不安定になります。
「肩甲骨を寄せる」という意識だけでなく、「肩をすくめない」「胸を軽く張る」という意識も持つとフォームを作りやすくなります。
適度なアーチを作る
ベンチプレスでは、腰を完全にベンチへ押し付ける必要はありません。
肩甲骨を安定させて胸を張ることで、背中には自然なアーチができます。
ただし、大きく腰を反らせること自体が目的ではありません。
特に筋肥大を目的としている場合は、無理に大きなアーチを作るよりも、安定したフォームで大胸筋へ十分な刺激を与えられる姿勢を優先しましょう。

足を床につける
両足を床につけて、下半身を安定させます。
ベンチプレスでは、足で床を押すことで体全体を安定させることができます。
ただし、お尻がベンチ台から浮いてしまうほど強く踏ん張る必要はありません。
「足で床を押して体を安定させる」と考えるとよいでしょう。
手首を立てる
バーベルを握るときは、手首が大きく後ろへ反らないようにします。
バーベルが手のひらの深い位置に乗るように握り、前腕から手首までが安定した状態を作りましょう。
手首が大きく反った状態で高重量を扱うと、手首への負担が大きくなる可能性があります。
ベンチプレスの重量・回数・セット数

ベンチプレスの重量や回数は、トレーニングの目的によって変わります。
筋力・トレーニング経験・目的・疲労状態などを考慮して、自分に合った負荷を設定することが大切です。
筋肥大を目的とする場合
筋肥大を目的とする場合は、フォームを維持しながら十分な負荷をかけられる重量を選びます。
目安として8〜10回程度を設定する方法がありますが、この回数だけが筋肥大に適した範囲というわけではありません。
重要なのは、設定した回数の中で適切な負荷をかけ、セットを重ねてもフォームを大きく崩さないことです。
筋力アップを目的とする場合
最大筋力の向上を目的とする場合は、筋肥大目的よりも高重量・低回数のトレーニングを取り入れることがあります。目安は1~5回程度となります。
ただし、高重量になるほどフォームの乱れや失敗時のリスクも高くなるため、十分なウォームアップを行い、安全設備を確認したうえで実施しましょう。
初心者の場合
筋トレ初心者は、最初から高重量を目指す必要はありません。
まずは軽めの重量でフォームを確認し、ベンチプレスの動作に慣れることを優先しましょう。
「何kgから始めるか」よりも、「決めた回数を正しいフォームで安定して行えるか」を基準に重量を設定することをおすすめします。
目安は8~10回としましょう。
セット数は何セット?
セット数もトレーニング経験や目的によって異なります。
初心者であれば少ないセット数から始め、トレーニングに慣れてきたら徐々に総トレーニング量を増やしていく方法があります。
胸のトレーニングでは、ベンチプレスだけでなくインクラインプレスやフライ系種目などを組み合わせる場合もあるため、ベンチプレスだけのセット数ではなく、1回の胸トレーニング全体のボリュームで考えることも重要です。
もし単一の種目で胸を鍛えるのであれば、少なければ3セットで時間が確保できるのであれば5~6セットはおこなえるといいでしょう。
ベンチプレスのグリップ幅はどれくらい?

ベンチプレスでは、グリップ幅によってバーベルの軌道や関節の動き、動員される筋肉の割合などが変わります。
そのため、すべての人に共通する「最適なグリップ幅」が存在するわけではありません。
基本的には、バーベルを胸まで下ろしたときに前腕地面に対して垂直になり、手首・肘・肩に無理のない位置を目安にしましょう。
競技としてベンチプレスを行う場合は、競技ルールや自身の体格、パフォーマンスを考慮してグリップ幅を設定する必要があります。
一方、一般的な筋力トレーニングやボディメイクであれば、極端に広いグリップにする必要はありません。
自分に合ったグリップを見つけることが、安全性とトレーニング効果の両方を考えるうえで重要です。
より詳しいグリップの種類や違いについては、「ベンチプレスのグリップ5パターン」の記事も参考にしてください。
ベンチプレスを安全に行うためのポイント
ベンチプレスは高重量を扱える一方、失敗したときにバーベルを自分で支えられなくなる可能性があります。
そのため、重量やフォームだけでなく、安全面にも注意しましょう。
- セーフティーバーを適切な高さに設定する
- 高重量では補助者をつける
- 無理に限界まで追い込まない
セーフティーバーを適切な高さに設定する
パワーラックやベンチプレスラックを使用する場合は、セーフティーバーを適切な高さに設定します。
バーベルを胸まで下ろした状態でセーフティーバーに干渉せず、万が一バーベルを支えられなくなった場合には身体を守れる高さを目安にしましょう。
ラックによって構造が異なるため、実際に重量を扱う前に必ず位置を確認してください。
高重量では補助者をつける
限界に近い重量を扱う場合は、トレーニングパートナーやスポッターに補助してもらうことも重要です。
特に1回の最大重量に近い重量へ挑戦するときは、一人で無理に行わないようにしましょう。
無理に限界まで追い込まない
毎回限界まで重量を上げる必要はありません。
フォームが大きく崩れている場合や、バーベルの軌道をコントロールできない場合は、重量を下げてフォームを優先しましょう。
また、肩・肘・手首などに痛みがある場合は、痛みを我慢してトレーニングを続けないことも大切です。
ベンチプレスでよくある間違い
ベンチプレスでは、重量が重くなるほどフォームが崩れやすくなります。
代表的な間違いを確認して、自分のフォームを見直してみましょう。
お尻がベンチ台から浮いている
重量を押し上げようとするあまり、お尻がベンチ台から浮いてしまうケースがあります。
お尻がベンチ台から浮くことで可動域が狭くなり、トレーニング効果が薄くなってしまうので注意しましょう。
バーベルを胸でバウンドさせる
バーベルを胸に勢いよく落として、その反動で押し上げる方法は避けましょう。
反動を利用すると動作をコントロールしにくくなり、胸や肩などへの負担にもつながる可能性があります。
バーベルは自分でコントロールできる速度で下ろしましょう。
手首が大きく反っている
手首が後ろへ大きく反った状態では、バーベルを安定して支えにくくなります。
バーを手のひらの深い位置に乗せ、手首を安定させましょう。
手首のフォームを詳しく確認したい場合は、「ベンチプレスの正しいグリップ5パターン」の記事も参考にしてください。
肩がすくんでいる
バーベルを押し上げる際に肩がすくんでしまうと、肩甲骨の安定が崩れやすくなります。
セットアップ時から肩をすくめず、肩甲骨を安定させた状態を意識しましょう。
重量が重すぎる
「ベンチプレスは何kg挙げられるかが重要」と考えて、無理に重量を増やしてしまう人もいます。
しかし、筋肉を鍛えるという目的では、重量そのものよりも、適切なフォームで十分な刺激を与えられることが重要です。
重量を増やしたことでフォームが崩れる場合は、いったん重量を下げることも選択肢です。
ベンチプレスのバリエーション
ベンチプレスにはさまざまなバリエーションがあります。
目的に応じて種目を使い分けることで、胸のトレーニングをより充実させることができます。
インクラインベンチプレス
インクラインベンチプレスは、ベンチ台の背もたれを起こした状態で行うベンチプレスです。
通常のベンチプレスと比べて、胸の上部を狙う種目として取り入れられています。
大胸筋上部を重点的に鍛えたい場合は、通常のベンチプレスと組み合わせるのもよいでしょう。
詳しいフォームややり方については「インクラインベンチプレス」の記事で解説しています。

ダンベルベンチプレス
ダンベルベンチプレスは、バーベルではなく左右それぞれの手にダンベルを持って行うプレス種目です。
左右の腕を独立して動かせるため、大胸筋を大きく収縮・伸張させることができバーベルとは異なる刺激を得やすいのが特徴です。

腕立て伏せ
腕立て伏せも、大胸筋・三角筋前部・上腕三頭筋を使う代表的なプレス種目です。
器具を必要としないため、自宅で胸を鍛えたい場合にも取り入れやすいでしょう。
ベンチプレスの重量を扱えない初心者のトレーニングや、補助種目としても活用できます。

ベンチプレスに関するよくある質問
- ベンチプレスは何回やればいい?
-
目的によって異なります。
筋肥大を目的とする場合は8〜10回程度を目安にする方法がありますが、筋肥大はこの回数だけで決まるわけではありません。
筋力アップを目的とする場合は、より高重量・低回数の設定を取り入れることがあります。
まずは目的に合わせて重量と回数を設定し、フォームを維持できることを優先しましょう。
- ベンチプレスは何セットやればいい?
-
トレーニング経験や目的、胸トレーニング全体のボリュームによって異なります。
初心者の場合は少ないセット数から始め、トレーニングに慣れてきたら徐々にボリュームを増やす方法があります。
- ベンチプレス初心者は何kgから始めればいい?
-
具体的な重量は、性別や年齢だけで決めることはできません。
まずはフォームを安全に練習できる軽い重量から始め、設定した回数を安定して行えるかを確認しましょう。
- ベンチプレスは毎日やってもいい?
-
基本的には、毎日ベンチプレスをおこなう必要はありません。
ベンチプレスでは大胸筋だけでなく三角筋前部や上腕三頭筋といった押す動作に関わる筋肉はもちろん、肩関節や肘関節にも大きな負担がかかるため、十分に体の疲労回復に努める必要があります。
頻度を増やす場合も、重量・セット数・疲労度などを調整しながら行いましょう。
- ベンチプレスで肩が痛くなるのはなぜ?
-
肩の痛みにはさまざまな原因が考えられるため、一概には言えません。
まずはグリップ幅・肘の位置・肩甲骨の安定・可動域・重量などを見直してみましょう。
痛みが続く場合や強い痛みがある場合は、無理にトレーニングを続けず、必要に応じて医療専門家へ相談してください。
ベンチプレスと他の胸トレーニングを組み合わせる
ベンチプレスは非常に優れた胸のトレーニング種目ですが、胸全体を発達させるために必ずしもベンチプレスだけを行う必要はありません。
例えば、
- ベンチプレス
- インクラインベンチプレス
- ディップス
- ダンベルベンチプレス
- ダンベルフライ
- ケーブル系の種目(ケーブルフライなど)
- 腕立て伏せ
などを目的に応じて組み合わせることができます。
特に大胸筋上部を重点的に鍛えたい場合はインクライン系の種目、筋肉を収縮させる動作を重視したい場合はフライ系の種目など、異なる特徴を持つ種目を組み合わせると胸トレーニングの幅が広がります。
まとめ
ベンチプレスは、大胸筋・三角筋前部・上腕三頭筋を効率よく鍛えられる代表的なプレス種目です。
筋肥大や筋力アップなど幅広い目的に活用できますが、重量を増やすことだけを優先するのではなく、安定したフォームでトレーニングすることが重要です。
特に意識したいポイントは以下の5つです。
- 自分に合ったグリップ幅で握る
- 肩甲骨を安定させる
- 胸を適度に張る
- 足を床につけて身体を安定させる
- 重量よりもフォームを優先する
ベンチプレスで思うように胸へ刺激が入らない場合は、重量・グリップ幅・肩甲骨の位置・バーベルの軌道などを一つずつ見直してみましょう。
ベンチプレスを正しく使いこなせれば、胸の筋力アップや筋肥大を目指すうえで非常に心強いトレーニング種目になります。

